平均律とは? 知っておきたい音楽知識を簡単に紹介
こんにちは。Piano Duo Nao&Yoshiakiの佐藤です。ピアノ練習の合間に息抜きでブロガー目指します。()
超絶唐突な「紹介シリーズ」第二弾😆(やりたいからやっています)
前回はリサイタルの曲紹介でした
今回は少し数学的な部分も関わる、楽器を演奏する方なら知っておきたい「平均律」の概念について紹介したいと思います。
はじめに
「平均律」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
バッハの作曲した"平均律"クラヴィーア曲集などはピアノ演奏者は誰しもが通る道ですね。
しかし、その平均律とは違うお話です。
平均律とは、楽器の音がどのように決められているか、あるいはどう決めていくのか、そのルールに関するものであり、現在の楽器のほとんどはこのルールにより音が決定されています。
平均律を理解すれば、今まで無意識で演奏していた音ひとつひとつに意味を見いだせることができますし、音色がどう構成されているかを演奏する時に体感できると思います。
自分自身も平均律について調べる前はこれっぽっちも気にしていなかったことが、気になってくるんです夜も寝れません。
こういうことを知ることは面白いですね(ひまか)
それでは、聞いたことがあるけどイマイチ概念が分からない平均律を掘り下げていきましょう。
平均律とは
平均律とは、前述したとおり楽器の音の高さを定義するためのルールの1つです。
そのような音程に関するルールには他にもピタゴラス音律や純正律などがあります。それらは詳しく理解するにはなかなか複雑ですが、それらに深く首を突っ込まなくても平均律の本質は捉えることができるので、今回はそれらを簡単に説明します。
・ピタゴラス音律の発明
ピタゴラス音律とは、ピタゴラス学派が初めて音程について音響学的に研究した結果生まれたルールです。
ピタゴラスがなぜ音程を研究しようと思ったのか、それには理由があります。
自身が散歩していて鍛冶屋の前を通りかかった時に、複数人でハンマーを打ち付ける音を聞いたそうです。
ハンマーが鉄を打ち付ける音が互いに共鳴し合い、心地の良い音が生まれる場合とそれらが上手く響きあわない場合があることに気づきました。さらに、響き合うハンマーは重量の比が整数比になっていることを発見しました。
ハンマーでは良く分からないので、弦で研究を進めました。
弦での研究において、ピタゴラスは弦の長さを変化させて、1オクターブを分割する作業を行いました。1オクターブを分割する際には、まず「基音」という、基準となる音を決めます。今回の場合は"ド"の音としましょう。
まず同じ長さの弦を2つ用意して、それを弾いた時に鳴る音をドの音に調整します。この長さの弦を1の弦とします。
その後片方の弦を短くして、2つの弦を同時に弾き、最も調和する音を探します。その長さは片方の1/2の長さであると判明しました。この長さの弦を1/2の弦とします。
1/2の弦を弾いた時の音は片方のドより1オクターブ高いドの音です。
この下のドから上のドまでの音を分割していく作業になります。
次に、長さが1/2から1までの音で、1の弦の音と調和する長さを探していきます。
探した結果、長さがもとの2/3の弦と1の弦が調和することが分かりました。
その音は今でいうソの音です。
次は、2/3の弦を弾いた時の音を基準に、それより高い、調和する音を探していきます。
その結果、2/3×2/3=4/9の長さの弦が調和することが分かりました。しかし、今は1/2から1の長さの範囲で弦が出す音を分割しているので、4/9では1/2から1の範囲に入っていないことになります。なので、その4/9より1オクターブ低い音である8/9を3つめの音としました。(つまり、先ほど弦が1/2になると1オクターブ上がることを逆に利用して、弦が2倍にして1オクターブ低くすることができるということです)
これらを繰り返していった結果、13回目で基音であるドの長さの弦の音に限りなく近い
弦が現れたので、そこで作業を止めたそうです。
つまり、12回の作業で1オクターブ下のドから上のドまでを分割できたのですから、1オクターブを12個の音に分ける事ができたというわけです。
たしかに今も1オクターブは12個の音で構成されていますね。
ピタゴラス音律は以上のような作業によって生まれ、結果的に1オクターブを12個の音に分ける事ができました。これらは弦の比率によって音程を決めたものです。
今も1オクターブが12個なのは、ピタゴラス音律が音楽発展に大きく寄与したため、それを改善する方向で研究が進んでいったからです。
しかし、ピタゴラス音律では、ドとミ(3度)で不協和となって濁ってしまうという欠点がありました。13回目のステップで、弦の長さが完全な1とならずに、そこで作業を止めたためです。少し不協和が生じてしまいました。
・純正律の登場
そこで時系列的に次に登場するのが、先ほど述べた純正律というものです。平均律を紹介する為には、純正律も歴史的に関係があり重要なので、軽く説明します。
純正律という音程のルールは、先ほど基音を決めたのと同様、基準となる音を決めることから始まります。
また音程を定義していくのですが、純正律の場合は倍音という考え方を使っていきます。
倍音とは、簡単に言うと、音の高さの具合(周波数)が2倍、3倍...となったものです。2倍音は、基音の1オクターブ上の同じ音を示していて、3倍音は、基音の音の高さの具合が3倍となったもので、基音がラの場合はミ(5度)の音がそれにあたります。基本的に音を鳴らすと、倍音もかすかに鳴っていることが、音響の波形を見ると分かるそうです。
波形のイメージ
純正律は、倍音を上手く使い、基音を基準として倍音の定義通りに周波数の度合いを変えていく方法です。純正律では、3倍音(基音のドからみたソ)と5倍音(基音のドからみたミ)を使って音程を決定していきます。
ドを基音とした場合、ド(C)の3度上がミ(E)、5度上がソ(G)、次にソ(G)の3度上がシ(B)、5度上がレ(D)、さらにド(C)の5度下がファ(F)、ファ(F)の3度上がラ(A)と言うふうに基音を決めれば、3倍音、5倍音の考え方で全ての音を1オクターブ内に配置する事ができます。
この音律で音を奏でると、基音の倍音と、音程の構成する音が全て一致することになるのです。
(今回は具体的な周波数の数値は出さないことにしました)
ところで、音というのは、少し音の高さ(周波数)にズレがあるとうなりというウォンウォンした雑音が聞こえます。
純正律で音程を決めた場合、基音の倍音と、音程の構成する音が全て一致するので、基音を鳴らした時に発生する倍音とうなりを発生する事がないため、とても美しく聞こえるというメリットがあります。
しかし、純正律にもデメリットがあります。
先ほどピタゴラス音律で弦の比率を変えて音を調整したことを思い出すと、音同士の高さの比が大事だということになります。
純正律は、ドを基音とした時のドミソの音はこの上なく美しく聞こえるのですが、レファラと弾いた時に不協和が生じます。
これは、純正律ではドとソが純正5度(音の高さの比が2:3)であるのに対し、ドを基音とした純正律で弾いた時のレとラの音の高さの比が27/40となって純正5度とは80/81の差が出てきてしまうためです。(この差をシントニックコンマといいます)
また、B-dur(変ロ長調)のシ♭レファを弾いてみようものなら、それもシとレにうなりがたくさん生じ、汚い音になってしまいます。これもシとレが、ドとミの純正3度とは音の高さの比が若干ズレることでうなりが生じることが原因です。
結局、純正律は、基音の決め方によって純正(音の高さの比が簡単な整数比になる)である関係の音と、不協和となる関係の音が生まれてしまうことが欠点なのです。
以上の理由で、純正律では、転調ができないことになります。つまり、ドを基音とした純正律でB-durの曲を演奏しようものなら、倍音によるうなりの影響で和音に不協和音が生じて、聴くに堪えないものになります。
・平均律の登場
いよいよ、ピタゴラス音律、純正律、それらの考案された音律のデメリットを払拭し、「妥協」したものが平均律です。
ピタゴラス音律、純正律はどちらも音の高さの比に着目して音を決定しました。平均律も同様、音の高さの比を重要視します。
今まで述べてきたように、1オクターブというのは、音の高さの比が1:2、つまり1オクターブ上げると、音の高さの具合(周波数)が2倍になることは平均律でも原則として同じです。
ピタゴラス音律や純正律を改良する事が目的なので、1オクターブ内に12個の音を収めることには変わりありません。
なので、1オクターブを12個の音に分割することを考えます。
平均律では、1オクターブの12個の音は、隣り合う音の高さの具合(周波数)の比は全て等しくなるように決定されるからです。
これは単に、少し難しい計算をすれば、均等に音を振り分ける事ができることを意味します。
*計算(2の12乗根とか変な言葉がでてきますが軽く目を通して下さい)
例えば、ラの音の周波数(音の高さの具合)が440Hzだとしましょう。その場合、次のように音の高さが決定されます。
音 | 周波数(Hz) |
---|---|
A4(ラ) | 440.0000000000 |
A♯4(ラ♯) | 466.1637615180 |
B4(シ) | 493.8833012561 |
C4(ド) | 523.2511306011 |
C♯4(ド♯) | 554.3652619537 |
D4(レ) | 587.3295358348 |
D♯4(レ♯) | 622.2539674441 |
E4(ミ) | 659.2551138257 |
F4(ファ) | 698.4564628660 |
F♯4(ファ♯) | 739.9888454232 |
G4(ソ) | 783.9908719634 |
G♯4(ソ♯) | 830.6093951598 |
A5(A4の1オクターブ上のラ) | 880.0000000000 |
表 平均律の周波数(音の高さの具合)
これは、1オクターブ上がると音の高さの具合(周波数)が2倍になる原則を用いて、各音同士の周波数の比が等しくなるように計算した結果得られる数値です。
高校数学で数列を習った方ならお分かりかと思いますが、これは初項440Hzであり、公比をrとした時、rを12回かけたら、周波数が2倍の880Hzになる計算をしてrを求めたのち、その後440×r、440×r×r、・・・というふうに周波数を決めていく作業をしています。
A4の440Hzに12回rをかけたら1オクターブ上の880Hzになるというわけです。
つまり、440×r^12=880になるわけですから、rは2の12乗根、1.05946309436..となることが分かります。
さて、ここからが重要です🙇♂️
平均律というのは、上記の表のように、無理数(小数点以下が無限に続く中途半端な数)を持つ音の高さの具合(周波数)が現れるので、純正律のようにしっかりとした整数比の関係にある音は1オクターブの関係にあるものだけです。(2オクターブなどもそうですが)
それ以外は、整数比とはならず、ドとソなどの5度、ドとミなどの3度は全てそれぞれが放つ倍音、その他各音間にほんの少しズレが生じ、僅かにうなりが発生してしまいます。
(音は倍音(音の高さの具合、周波数が2倍、3倍、・・の音)を発生させることと、和音を弾いた時に倍音に周波数のズレがあるとうなりが生じて汚い音になることは先ほど述べました)
つまり、純正5度や純正3度などの音の比率に限りなく近いが、すべての音に対して、和音を奏でると若干うなりが生じて不協和となるのが平均律ということです。
うなりによる若干の不協和は平均律のデメリットですが、現在幅広い楽器で使われている以上、それを遥かに上回るメリットがあります。
それは、純正律では出来なかった、転調が可能であるということです。
↑転調できて喜ぶ人の図
各音の音の高さ(周波数)の比が同じなのですから、ドとソ、シ♭とファ、レとラすべての音の高さの比が等しいことになります。これは、C-durをB-durで演奏しても、全く違和感なく聴くことができることを意味しています。
先ほど述べた倍音によるうなりの影響は実際表面化して聞こえることは少なく、むしろ転調できるというメリットを考えると、それらはどうでもよくなってしまうというわけです。
これら平均律は、ピアノはもちろん、ギターなどにも使われます。
逆に先ほど紹介した純正律は、人の声を楽器として扱う合唱、格式高いオルガンなどに使われています。
はじめに平均律は「妥協」した音律と言いましたが、これは、純正律による純正5度などの天上的な響きと比べたら劣るけれど、転調が可能な万能な音律であるという意味で、妥協という言葉で表現しました。
最後に
如何だったでしょうか。平均律というものは普段意識しない事なので、僅かな不協和は感じないかもしれませんが、ここまで普及したのには訳があったということですね。
平均律による音色の違いを意識して演奏してみるのも面白いかもしれません。
それじゃあまた!
最後まで読んでくださりありがとうございます。
Piano Duo Nao&Yoshiaki 佐藤
(本記事について間違っていることがあればコメント等でご指摘をよろしくお願いします🤲)
参考
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/平均律
平均律の周波数表
http://www.floatgarden.net/flstudio/hz.html
http://www.math.shimane-u.ac.jp/~miwamoto/2016mmm1/mmm1-12.html
http://makeo-blog.net/chord/onritsu1/